說林上第二十二
第11説話

 ── 『韓非子』說林上第二十二. 第11説話
 ── 「原文、訓読、語釈」
(新釈漢文大系11『韓非子 上』竹内 照夫 著 - 明治書院)

 【 原文 】
 魏文侯借道於趙而攻中山。趙肅侯將不許。趙刻曰、君過矣。魏攻中山而弗能取、則魏必罷、罷則魏輕、魏輕則趙重。魏拔中山、必不能越趙而有中山也、是用兵者魏也、而得地者趙也、君必許之、許之而大歡、彼將知君利之也、必將輟行、君不如借之道、示以不得已也。

 【 訓み下し文 】
 魏(ぎ)の文侯(ぶんこう)(みち)を趙(てう)に借(か)りて、中山(ちうざん)を攻(せ)めむとす。趙(てう)の肅侯(しゅくこう)(まさ)に許(ゆる)さざらむとす。趙刻(てうこく)(いは)く、君(きみ)(あやま)てり。魏(ぎ)、中山(ちゅうざん)を攻(せ)めて取(と)ること能(あた)はずば、則(すなは)ち魏(ぎ)(かなら)ず罷(つか)れむ、罷(つか)るれば則(すなは)ち魏(ぎ)(かろ)く、魏(ぎ)(かろ)くば則(すなは)ち趙(てう)(おも)からむ。魏(ぎ)、中山(ちうざん)を拔(ぬ)くとも、必(かなら)ず趙(てう)を越(こ)えて中山(ちうざん)を有(たも)つこと能(あた)はざらむ、是(こ)れ兵(へい)を用(もち)ふる者(もの)は魏(ぎ)なり、而(しかう)して地(ち)を得(う)る者(もの)は趙なり、君(きみ)(かなら)ず之(これ)を許(ゆる)せ、之(これ)を許(ゆる)して大(おほい)に歡(くわん)せば、彼(かれ)(まさ)に君(きみ)の之(これ)を利(り)とするを知(し)らむとす、必(かなら)ず將(まさ)に行(かう)を輟(や)めむとす、君(きみ)、之(これ)に道(みち)を借(か)して、示(しめ)すに已(や)むを得(え)ざるを以(もつ)てするに如(し)かざるなり、と。

 【 語釈 】
 ○魏文侯 前四世紀前半の人。 ○趙肅侯 前四世紀後半の人で、魏文侯との話が合わぬから、諸注は訂正して、趙の烈侯のこととする。

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