『やむをえない舞台裏』
現代日本語訳

 魏の文侯の発した遠征軍が趙国の土地をよぎる進路で中山国へ侵攻した。
 領内を侵略者に横切られる趙の殿様は心境穏やかではなく、領土侵犯を口実にして邪魔立てしてやろうかと考えた。
 すかさず趙利が進み出てなだめた。
 「ぶち壊しでございましょう。
 魏が中山へ攻め込んだところで、骨折り損に終われば魏は必ずくたびれます、くたびれれば趙が重くなるというものです。
 そして中山国に抜け駆けした魏がまんまと彼(か)の土地をもぬけの殻にできましても、間違いなく趙を追い抜けもしないで中山国を手にすることになります、それすなわち魏に戦力を負担させておきながら土地は趙がちょうだいするわけです。
 ここはわが君にはお見逃しの一手と存じます。
 お通しになられることは大いに勧めるのですが、向こうは趙に有利なことになるなら行かないに決まっております。わが君は気前よく領内を通らせつつ、やむをえない顔をしておくことが肝要でございます」

文侯map1
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