說林上第二十二
第22説話

 ── 『韓非子』說林上第二十二. 第22説話
(新釈漢文大系11『韓非子 上』竹内 照夫 著 - 明治書院)

 【 原文 】
 22.
 樂羊為魏將而攻中山。其子在中山、中山之君、烹其子而遺之羹、樂羊坐於幕下而啜之、盡一杯。文侯謂堵師贊曰、樂羊以我故、而食其子之肉。答曰、其子而食之、且誰不食。樂羊罷中山。文侯賞其功而疑其心。

 【 訓み下し文 】
 樂羊(がくやう)(ぎ)の將(しやう)と為(な)りて、中山(ちうざん)を攻(せ)む。其(そ)の子(こ)中山(ちうざん)に在(あ)り、中山(ちうざん)の君(きみ)、其(そ)の子(こ)を烹(に)て之(これ)に羹(あつもの)を遺(おく)る、樂羊(がくやう)幕下(ばくか)に坐(ざ)して之(これ)を啜(すす)り、一杯(いつぱい)を盡(つく)せり。文侯(ぶんこう)堵師贊(としさん)に謂(い)つて曰(いは)く、樂羊(がくやう)、我(われ)の故(ゆゑ)を以(もつ)て、其(そ)の子(こ)の肉(にく)を食(くら)ふ、と。答(こた)へて曰(いは)く、其(そ)の子(こ)すら之(これ)を食(くら)ふ、且(は)た誰(たれ)をか食(くら)はざらむ、と。樂羊(がくやう)中山(ちうざん)より罷(かへ)る。文侯(ぶんこう)、其(そ)の功(こう)を賞(しやう)したるも、其(そ)の心(こころ)を疑(うたが)ふ。

 【 通釈 】
 楽羊が魏の将になって中山を攻めた。羊の子が中山にいたが、中山の君はその子を殺し、その肉を煮て汁をつくり、それを羊に贈らせた。羊は陣幕の下にすわってそれをすすり、碗一杯をつくした。魏の文侯は堵師賛(としさん)に言った、楽羊はわしのために、(気の毒にも)わが子の肉を食った、と。すると賛は答えた、わが子の肉でも、食ったのです、ではたれの肉なら食わないのでしょう、と。楽羊が中山から引き揚げてくると、文侯はその戦功を賞したが、もう信用しなかった。

 【 語釈 】
 ○魏文侯 この篇(三〇〇頁)に前出。

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