『文侯のおこたり』
主文

 ── 文侯虞人と.

 文侯與虞人期獵 是日 飲酒樂 天雨 文侯將出 左右曰 今日飲酒樂 天又雨 公將焉之 文侯曰 吾與虞人期獵 雖樂 豈可不一會期哉 乃往 身自罷之 魏於是乎始強

 文侯、虞人(ぐじん)と猟を期す。是(こ)の日、酒を飲み楽しむ。天雨ふる。文侯、将(まさ)に出でんとす。左右曰く、今日(こんにち)酒を飲むこと楽し、天又雨ふる、公将に焉(いづく)にか之(ゆ)かんとする。文侯曰く、吾、虞人と猟を期す、楽しと雖も、豈に一たび期に会せざる可けんや。乃ち往き、身ら自づと之を罷む。魏、是よりか始めに強む。


 文侯は猟場の役人と狩りの予定を取り決めていた。
 さて当日、早くから酒を飲んで楽しんだ。外では雨が降り出した。そして文侯は出かけようとした。
 側近の者があっけにとられた顔で問いかけた。「本日ただいま、おいしいお酒を楽しんでる。外も降り出してきた。で、親方さまはどこに行こうとなさってるんで?」
 文侯は悲しい顔で振り向いた。「オレは狩り場の連中と約束しちまってたんだよな、おいしいお酒は心底やまやまなんだが、やはりちょっくら行くだけは行かずばなるまい!」
 無理に踏ん切りを付けた文侯は不承不承お狩り場へ出かけて行き、自分で楽しい酒を放り出すことになった。
 魏はここからなのだ、はじめに頑張る国になった。

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