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『オズの魔法使い』

このページの構成

【概要】

公開: 1939年
備考: 

【解題】


 1939年アメリカ実写映画「オズの魔法使い」。
 同名の原作は1900年出版、米国作家ライマン⋅フランク⋅ボーム。ただし原題にすると原作が’The Wonderful Wizard of Oz‘、映画が’The Wizard of Oz‘。映画タイトルのほうはWonderfulを省略して、ちょっぴり大人びた思考力を要求しているかもしれません。
 児童文学類の原作は挿し絵を多用したそうです。絵本と言うより、昔の和本に近いと言うべきでしょうか。原作者が当時の識字率や対象読者の年齢層を考慮して、字が読めなくても楽しめるようにとの気遣いだったといわれます。それからすると映画化はいわゆる時間の問題だったのでしょう。
 ところで1939年ころというと、ウォルト⋅ディズニーのアニメ映画が評判となり、それに対抗したトムとジェリーのシリーズ作品なども作られます。古いキャラクターですが、今でもそこかしこで見かけるベティ⋅ブープもすでに生まれていました。新興の映像・映画という表現術に児童ものという分野が確立された時期です。
 さて映画「オズの魔法使い」、監督はあっと驚くヴィクター⋅フレミング。同年の「風と共に去りぬ」で映画界の頂点を極めた巨匠です。同じ年に映画史上の不朽作を二本も作ってしまったことになります。同業者にとっては強すぎる刺激剤だったかもしれません。
 映画オズも原作の忠実な映画化というより、当時出始めのカラー映像を果敢に取り入れるなど、活動屋としてアグレッシブに撮ったようです。
 ただしミュージカルで撮るという着想は映画制作時の独創でもなく、一本道に原作から得たのでもありません。原作出版から2年後の1902年にミュージカル舞台化されています。その舞台タイトルがWonderful抜きの’The Wizard of Oz‘。
 原作者ボーム自身がミュージカル舞台化を発案したといわれ、脚本を手掛けています。ミュージカルのため挿入歌の詞も書いたそうですが、実際の公演ではその多くが不使用となり、他の歌に差し替えられたとか。舞台演出は観劇客の年齢構成を考慮して、新たに前国王のクーデターという別筋が立てられ、むしろそれを主題として、例の女の子ドロシーたち一行はその政治事件に立ち会う脇役的存在で登場するようです。もちろんお話の世界観は原作そのままWonderfulなオズの世界を引き継ぎました。
 この舞台化も好評だったようです。ブロードウェイの演目にのぼり、翌年にかけてロングランした記録があります。
 それにしても、すでに原作出来の時点で著作者の単独作業ではなく、挿絵師を引き込み、不特定多数のチビッ子読者を巻き込んだオズ旋風ですが、舞台化では演出家、出演陣、楽団などなど、さらに多くの制作関係者を引き込み、そして子供に限らない一般社会の観衆も巻き込みました。
 ところが1902年の舞台化でも好評を博したとはされながら、1939年の映画化当時、もう舞台用の楽譜からも何までもすっかり失われ、かつてその舞台を実際に観た人の記憶くらいしか参考にできるものがなかったといいます。
 そこで原作出版から始まるオズという一大タイトルの歴史の上で1902年ミュージカル舞台化の果たした役割はこのタイトルにミュージカル要素を加えただけと小さく評価されることもあるようです。しかし慈善的で小規模な児童公園だったオズの世界を一般向けの商業テーマ⋅パークに改修しようとした舞台化という営利活動の功罪は小さくなかったかもしれません。
 舞台化の後、原作者ボームはかねてから児童読者のあいだで要望が強かったオズ続編を書きます。ほとんど知られていませんが、『オズの魔法使い』は結果的にシリーズものとなりました。商業目的を優先させた舞台化に原作者が落胆したとも報道され、続編は初心に立ち返って子供たちを喜ばせるために書かれたようですが、初心に返りすぎたのでしょうか、パッとした評判は立たなかったようです。
 さて1939年、映画「オズの魔法使い」。かつて原作者も参画していた舞台化で成功例があるミュージカル演出を踏襲、ただし使用楽曲は全くあらためて用意するしかなく、今や欠くことができないオズ主題歌「虹の彼方に」もこの映画制作時の書き下ろしでした。
 テーマソングを歌う少女ドロシー役のジュディ⋅ガーランド、後に最も偉大なお騒がせハリウッド女優へ成長していきます。映画オズ主演時はまだ年齢的に子役、とはいえ原作の幼い女の子よりずっとお姉さんでした。
 かつてオズ世界のさらなる進展を期して舞台化に乗り出した後、原作者は我が子のようなオズを児童文学に連れ戻してしまいましたが、この映画化はどちらかというと逆にむしろ舞台化を推し進めた格好です。なにしろ上記したようにこの映画化当時はいわゆるカートゥーン諸作品が米国アニメ黄金期を現出し、この映画オズも小さい子供の冒険が主題になっていた米国児童文学の古典を掘り起こした点ではそうしたカートゥーン全盛期に与していますが、しかし子供に人気のアニメではなく実写で撮っていますから、アグレッシブに一般観衆の入館料収入を当て込んでいたことはあからさまです。
 目論みどおり実写映画版オズのつむじ風は世界のすみずみの田舎町でも一般の観衆を巻き込み、今のところこの映画版が歴史の長いオズという一大テーマの決定版作品となっています。
 とはいえ、とにもかくにもオズの世界はWonderfulですから、今後はどういった進展があるのか、この映画版がずっと決定版であり続けるか、予断を許しません。
Mar 19, 2017 - サイト管理人

The Wizard of Oz5

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【 虹の彼方に 】
 Over the Rainbow

 write: E.Y. 'Yip' Harburg, Harold Arlen,
 sing: Judy Garland
 Victor Young & His Orchestra

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