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ヤマトしうるはし

このページの構成

【概要】

詠者: やまとたける
作者: 未詳
製作: 大和時代(広義)
備考: 
ヤマトタケルは『古事記』中巻の偶像的英雄。すなわち伝説時代の人。当初は有史以前大和王権の皇太子がモデルだったかと推測される。
草薙剣の名前など、多くの地名・名称の由来伝説を持つ。
『古事記』の皇統では第15代応神天皇の祖父、算出すると西紀300年代の人。ただし『古事記』中巻の皇統は「編集の都合」でしかない。

【解説】

 【 Greatest詩歌 3 】
  ー 白鳥の歌 ー

 「ヤマトは 国のまほろば たたなづく 青垣 山ごもれる ヤマトしうるはし
  (夜麻登波久爾能麻本呂婆多多那豆久阿袁加岐夜麻碁母禮流夜麻登志宇流波斯)」

古事記13

 『古事記』ではヤマトタケルの詠歌とされます。
 ヤマトタケルは第12代景行天皇の皇子、元服前は小碓命(おうすのみこと)、のちに倭建命(やまとたけるのみこと)。『日本書紀』の日本武尊。なお、『日本書紀』はこの歌を景行天皇の御製としています。
 『古事記』によると、ヤマトタケルは父の景行天皇から決死の西征を命ぜられ、クマソタケル・イヅモタケルという西国の二大豪傑を捨て身の策略で誅滅。しかし尻を落ち着ける暇もなく重ねて東征のご下命、いよいよ天皇の無慈悲な真意に思い至るも泣く泣く東国を転戦、その帰路に死期を悟って詠んだものがこの ‘ヤマトしうるはし’ の歌だといいます。
 要するに『古事記』では、生きて帰れそうにないふるさとを想う望郷の詠歌ということになるのでしょう。

古事記14

 しかし『古事記』の数年後に成立した『日本書紀』がこの歌を景行天皇親征先の作とするように、もう西紀700年前後には作者をヤマトタケルとしない見解も現れ、必ずしもヤマトタケルの作歌とする確たる証拠があったわけではないようです。
 『古事記』、『日本書紀』、食い違う作者を提示する二つの書があるという事実から考えて、この歌は西紀700年ころにはもはや詠み人知らずのパブリック・ドメインになっていたとする憶測が最も穏当なのかもしれません。『古事記』のヤマトタケルも『日本書紀』の景行天皇も古代大和のスタンダード・ナンバーをカヴァーしているだけなのでしょう。

古事記9

 さて、『古事記』では悲劇的生涯のクライマックスにこの歌「ヤマトしうるはし」を詠唱しているヤマトタケル。『古事記』の記述はこの歌を詠唱した後の彼について、驚きの事実を伝えます。
 致命的な病に罹った東国遠征からの帰還の途上、予期したとおり故郷大和を遠く望みながら絶命すると、ヤマトタケルは大きな白鳥に化したということです。
 のちに彼を祀った神社が白鳥神社や大鳥神社など白鳥関連の名前で呼ばれるように、古来注目されてきたヤマトタケルの白鳥伝説。
 初めに要約したように、『古事記』ヤマトタケル物語はかずかずの冒険逸話で彩られていますが、偶像化された有名人につきもののそうしたフィクションを彼の実像だと思い込んでしまうと、この白鳥になるという幕切れは意味不明の荒唐無稽なメルヘンにしか思えないかもしれません。
 しかし、そもそも『古事記』で述べられているヤマトタケル物語の核心は天皇になれなかった悲しい皇太子という点です。
 日本文化では、この世にそうした無念を残すと、死後、怨霊となって祟るものと相場が決まっています。
 ところがヤマトタケルは故郷やまと恋しさの詠歌を済ませたのち、怨霊となって祟るどころか、逆に羽色も無垢潔白の大白鳥となり、けなげになおも故郷大和の方角へ飛び立つのでした。
 そして彼は神として祀られます。古代大和人にすれば不遇な皇太子の祟りを未然に防ぐ必死のあの手この手だったかもしれません。
 反対にヤマトタケルという御子の立場で考えると、生前は次期皇位を約束された皇太子として立てられながらついに即位もならず、そのうえ死後は祟って出るという基本的な人権も封じられ、それこそ踏んだり蹴ったり。
 しかし祟る権利を潔く放棄したヤマトタケルはその後、『古事記』が伝えているような数々の冒険逸話を加増され、今日でも知らない人がいないほどの日本古代屈指の英雄へ特進します。帳尻は合っているのでしょう。

古事記15

 ところで、日本の古い文学には見られませんが、ヨーロッパには「白鳥の歌」(スワン⋅ソング、Swan–Song)という言葉があります。白鳥は鳴く姿をめったに見せないものの、死期が迫ると生涯最高に美しい声で鳴く、と古くから言い伝えられているそうです。そこから転じて、詩人や作曲家の人生最後の作品も、大いに敬意とお世辞をこめて「白鳥の歌」と呼ばれたりします。有名な例では、シューベルトの生前未完に終わった第3歌曲集が作曲者の死後に仕上げられて「シューベルトの白鳥の歌」と名付けられました。
 『古事記』ヤマトタケル伝説における望郷の詠歌「ヤマトしうるはし」は詠唱されるタイミングとしてもヤマトタケルの人生において白鳥の歌ですが、まして死んだのち白鳥に神怪変化する人の詠唱ですからなおさらです。
Mar 12, 2017 - サイト管理人
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