『ガリア戦記』

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【概要】

成立: 
備考: 

【解題】

 現代の歴史学では1次資料というものが格別に尊重されます。
『ガリア戦記』はかのジュリアス・シーザーのガリア遠征の幕営で作られましたから、かなり貴重な1次資料ということになるでしょう。
 シーザーが遠征地ガリアの軍営からローマの元老院へ送った戦況報告書です。
 ところが、彼が何よりも処世の能力に長けた人物だったことを思い合わせると、この報告書の内容にそこまで歴史的信憑性があるのか疑問になります。
 彼の世渡りの才能は友人たちからお金を借りるために培われ、借金から逃れるうちに磨かれたそうです。その借金は遊ぶお金でした。
 持ち前の才覚で順調に出世街道を歩いていたシーザーでしたが、出世で得られる社会的信用の分だけ借金を重ねるものですから、とうとうローマに身の置きどころがなくなりました。
 彼のガリア戦は遠征にかこつけてローマから雲隠れするためだったと言われます。すくなくとも巨額を投じている債権者たちはそう勘繰ったことでしょう。
 そんなずる賢い男ですから、遠征地からの報告書にも細工しないはずがありません。
 このころの都市国家ローマはまだ帝政ではなく元老院政でした。なにしろ皇帝になるべきシーザーが逐電中ですからしようがありません。
 政治のことはすべて元老院で決定するため、シーザーは戦況報告を元老院へ送る義務があります。『ガリア戦記』はいわば上役への業務報告です。
 そういう営業報告をばか正直に書く野心家は寡聞にして知りません。自分の働きを良く見せるに決まっています。相手が弱小でも難敵だったように、運で勝っても戦略的見通しが的中したように、撃破できなかったとしても異民族へ寛容を示したように。
 しょせん1次資料といえど文献はいろいろ思惑のある人間によって作られる文学作品です。
 その勝利報告書が届くたびに元老院は色めき立ち、ローマ中が沸き返りました。今も昔も寡占メディアの力は絶大です。皇帝になるべき英雄指揮官が誕生しました。
 もとよりシーザーのガリア遠征はいくばくかの戦果を挙げたのでしょうが、それにしても現代日本の我々が『ガリア戦記』の記述を額面どおり受け取る筋合いはありません。
 以上のとおり、ガリア戦役を正確克明に記録したというより、かなりの粉飾が疑われる『ガリア戦記』ですが、歴史に名高いかのジュリアス・シーザーを英雄にならしめた一個の記念物として見れば、それはそれで第1級の歴史資料ということになるのでしょう。
 そうすると、書物ですから「古典」と呼ぶことになってしまいますが、いわゆる「名著」とは何かちがう気がします。

Jan 24, 2016 - サイト管理人




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